一般社団法人 1.7GHz移行推進協会

ITシステムを短期構築した成功要因はクラウドファースト・モバイルファースト

業種
一般社団法人
事業規模
1~499名
改善課題
データ連携

一般社団法人 1.7GHz移行推進協会

従業員数:約120名(2025年4月現在)
所在地:東京
業種:一般社団法人

導入前の課題

  • 協会の立ち上げに伴い、業務フローを考慮した管理すべきデータと処理を定義する必要があった
  • コロナ禍、オリンピックによる出勤抑制に対応できるクラウド環境の確保
  • 公共性の高い事業のため内部統制強化が重要だった

導入後の効果

  • ITシステムを短期間で構築し、業務継続性を確保
  • クラウドを基盤に、クイックデータアクセスや統一データ共有の仕組みを構築
  • 稟議申請データを基幹システムに一気通貫で連携、ヒューマンエラーを抑止し業務効率化と内部統制強化を実現
導入サービス
データ連携ソリューション

クラウドファースト・モバイルファーストを掲げ、ITシステムを構築

−はじめに、協会設立の経緯と事業内容を教えてください

中尾様:当協会は、防衛省が業務用無線局として使用していた1.7GHz帯の終了促進を目的として、KDDI、沖縄セルラー、楽天モバイルの認定3社で2018年に設立しました。防衛省の公共用無線局は別の周波数に移行し、1.7GHz帯を一般の携帯電話で利用できるようにしようという電波再編事業になります。

 

−新設法人でのITシステム構築はどのように進められたのでしょうか

福島様:最初にクラウドファースト、モバイルファーストの方針を立てました。当時、2020年の東京オリンピック開催にあたって、混雑回避のために周辺沿線の出勤停止などの対応が求められていたんですね。クラウドやモバイルがないと業務継続できないよねということでスピード感をもって構築を進めました。結果的にオリンピックよりも前にコロナ禍になりましたが、業務に影響は出ませんでした。

中尾様:まずは基幹系システムの構築を先行し、PCAクラウドの「公益法人会計DX」、従業員全員が使う業務フロントとしてはCOEL社の「manage」を採用しました。ITシステムの構築には今後の業務フローを考慮する必要がありますが、当事業は前例のない事業だったので、管理するデータは何か、どう処理していくかなど、定義を決めるところから始めなければなりません。出来るだけ汎用的なツールで、データ連携などは効率的に開発が行えるようにノーコードツールを利用して構築を進めました。連携部分の開発はCOEL社に開発を依頼し、現在も継続的に支援をしていただいています。

 

−企業情報化協会が主催するIT賞で奨励賞を受賞されたそうですね

中尾様:2023年度IT賞のマネジメント領域で受賞しました。ITシステムの構築にあたっては、当協会の主要業務機能を「費用」「文書」「工程」の3つに分割定義をして業務フローを作っていきました。防衛省の仕事は、何をするにも文書の作成・提出があって初めて物事を進めることができます。しっかりとした建設工程の計画をたて、工事に伴う費用管理を適切に行うといった業務の流れをmanageのワークフローシステムを中心に構築しました。そして、manageに蓄積されたデータはAzure上に集約し、BIツールを使ってレポートできるようにしています。前例のない業務形態でしたが、システム化と業務フローの構築を一緒に進め、短期間でデータの一元化と可視化まで達成できたことを評価いただけたと思います。

システム化による内部統制強化と業務効率向上

−行政機関の関連事業として、内部統制は重要課題だったのでしょうか

福島様:お金の証明性を非常に大事にしています。部門と業務の回し方でいうと、稟議を起案するのは事業推進部でも、予算との整合をチェックするのは運営管理部、そして購買部にも回付をまわし他部門のチェックがはいるようにしています。目を多くして手間がかかったとしても分担制や合議制を確立しなければいけないという考えです。

鈴木様:内部統制は、いつ誰が承認したのか証憑も含めて証拠が残るのがとても大事で、それがシステム化により自動で記録され、信頼性が担保されるというのが重要なポイントになると思っています。

中尾様:協会の業務は防衛省の代わりに電波施設の調整を行う公共性が高いものなので、できるだけシステム化を通じて業務内容を整理しています。ワークフローの承認プロセスも協会の規約を投影しつつ細かく組み立てを行っています。manageのワークフローは柔軟性が高くとても使い勝手がいいです。サポートも充実していますね。

 

−様々なワークフローの情報を連携されているとうかがいました

中尾様:manageの稟議申請が承認されると、管理会計に関連するものはAzure、kintoneを経由してPCAに連携しています。一般企業とは少し違う管理も必要で、協会特有の要件はAzure、kintoneで中間処理をしてPCAへの取り込みを行っています。

舩戸様:稟議申請が一気通貫で基幹システムに連携されるので効率的でデータの精度も高いです。一方で、職員の入力時にヒューマンエラーが起きないような制御や工夫をしています。特徴的なのは、コード体系によって色々な分類や制御をしていることですが、設立当初から業務対象になるものをコードで判別できるような設計の方針がたてられました。

中尾様:このように、内部統制を意識しつついかに効率的に業務を行うかを考えITシステムを構築してきました。伝票の処理数も設立時から5倍に増えているのですが、要員は増やさずに済んでいます。

全体最適を見据え、継続的な改善への取り組みで組織を支える

−情報システムグループが主導するITシステムは重要な役割を担っていますね

舩戸様:事業部門が自部門の都合を優先してツール導入をするのはよくあることだと思いますが、組織としての俯瞰的な視点は必要で、それができるのが情報システム部門だと思っています。その部門に特化したものが必要なのか、協会全体として必要なのか、きちんとした線引きをすることで協会全体にいい効果が出ると思っています。

片口様:事業部門から運用の相談を受ける中で、よくエクセルの管理表を作っているという話が出てきます。部門が違っても同じ目的ならば共通のワークフローを作ることで一元管理ができ、統一感のあるわかりやすい運用を構築することができます。全体を見渡した改善は情シスならではのことで、現場から感謝されることも多いです。

鈴木様:現場の職員とは近い距離感でコミュニケーションがとれています。信頼される情シスとして全体最適を考えるのが重要ですね。

−今後の業務改善についてお聞かせください

中尾様:設立当初からデータの一元化を進めていましたので、協会の活動全体はデータに集約されています。工程の流れの中で、工事進捗、防衛省への提出文書、費用の支払い状況といった関係する事柄がたくさんありますので、それらを串刺しで取り出すことができるようにしていきたいと思っています。全員が統一した正確なデータで会話をしなければ認識がずれて正しい議論になりませんので、事業上適切な判断ができるような環境作りに継続して取り組んでいきたいと思っています。

鈴木様:内部統制の視点もあり、システム化は非常に大事なところです。色々要望が出てきますが、COEL社の方には要望背景も含めてシェアをしたいと思っていますので、一歩踏み込んだ提案もしていただけるといいですね。

 

−先見のある方針をたて、業務フローとシステムをゼロから作り上げた推進力の強さがとても印象的でした。貴重なお話をありがとうございました。

公開日:2025年6月20日
※本ページに記載の内容は取材当時の情報です